■このゼミを始める理由

世の中には、貧困・環境破壊・災害・障がい・子育てと仕事の両立など、多くの社会的課題(社会問題)があります。

かつて、そうした問題は、政治や行政が解決しようとしてきました。

しかし、政治や行政は常に社会の多数派に対して最大公約数的な施策を講ずることが優先され、少数派の苦しみは先送りされてしまうため、多くの社会問題が解決されずに放置・増殖することになりました。

そこで、民間(市民)の側から一刻でも早く、そして一人でも早く社会問題に苦しみ続ける人を救い出そうという動きが広まり、今日ではその解決の担い手として「社会起業家」が注目され始めました。

社会起業家とは、営利最優先の目的でビジネスを行う従来の企業とは異なり、問題解決を目的にビジネスを「手段」にして働く人たちのことを言います。

社会問題の解決には、それに従事するスタッフの人件費や事務所の家賃、営業交通費など、多くのお金がかかります。
そこで収益になる事業を作り出し、解決活動にかかる経費を賄おうと、解決活動を持続可能にする新たな仕組みを開発したのが「社会起業家」なのです。

 社会問題の解決には、寄付や助成金などをもらって動く団体もありますが、その多くは単年度しか与えられないため、次年度や3年目まで活動を続けたくても、難しい面があります。

 だからこそ、他人の金を当てにするのではなく、自ら収益事業を作り出して収入を確保しながら、そこで得たお金を活動費に充当させる必要があるのです。

 これは、3・11で被災した東北の支援活動でも同様です。
 初年度や2年目までなら、寄付や助成金で活動できるかもしれません。
 しかし、3年目になると、そのようなお金は底を付きます。

 だからこそ、ちゃんと食えている(=収益事業で儲けて問題解決活動を持続可能にしている)社会起業家の実例から、その新たな解決モデルや画期的な手法を学ぶ必要があるのです。

 しかし、今日の日本には、社会起業(ソーシャルビジネス)に関心を持っても、意欲から実践へとつなげられるように深く学べるチャンスは少ないです。

現在ある「学べる機会」の多くは、学生しか受講できない閉鎖的な大学でのゼミ・講義か、何十万円も出して成果が出ない費用対効果の悪い民間の教育機関か、社会起業家の話を一方的に聞くだけの単発のイベントです。

ビジネスの手法を学べるチャンスは多いのに、社会的課題の解決の精度や手法を具体的に教わるチャンスは乏しいのです。

これでは、課題解決に存在意義を置くソーシャルビジネスの根本的な魅力は伝わりません。
多くの市民が知らないままだと、社会問題に苦しむ人たちがいつまでも苦しみ続けるだけです。


つまり、問題の解決に従事するNPOなどのスタッフの側の力量不足が、社会的弱者の苦しみを温存しているのです。

そこで、「市民の誰もが受講でき、安価で、継続的にソーシャルビジネスを学べる」講座を新設しようというのが、「社会起業家・養成ゼミTOKYO」なのです。

このゼミでは、半年間に毎回1名の現役の社会起業家を週変わりで招き、20名以上のソーシャルビジネス事例の講義(全24回)を行うことで、深刻な社会的課題を解決できるスキーム(仕組み)やビジネスモデルに至る実践的な知恵を学びます。

同時に、毎回1名のゼミ生の解決スキームとビジネスモデルを発表させ、全員参加(ゲスト社会起業家を含む)の議論で徹底的に解決手法を洗練させていきます。

受講生全員が新たなソーシャルビジネスの誕生について当事者性を持ってコミットし合い、各自の属性を有機的につなげる集合知によって学びをシェアしていきます。

そして、ビジネスを始める際に営業上あるいはスタッフ確保のために必要不可欠となる「マスメディアに取材される技術」(広報戦略)を毎回1項目、丹念に習得していきます。

また、毎回のゼミの終わりにはカフェ・ミーティングを設け、多彩な経歴・人脈・スキルをもつ受講生どうしの交流を促進し、互いに有益な人材として関り合えるつながりを演出します。

さらに、facebook上の専用ページUstreamによる講義中継(録画アーカイブも)などを設けて日常的にも講義内容に対する理解を深めると同時に、東京での講義を全国各地のソーシャルビジネスを学びたい方へ提供できるようにします。

 経産省がソーシャルビジネスの市場規模の推定値を「約34兆円」と試算している今日、このゼミから一人でも多くの「問題解決の精度を上げながら食える社会起業家」を新たに輩出したいです。



(このゼミの第5回に登場した株式会社peer代表・佐藤真琴氏の講義の様子)

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